地獄の階段

 2時から道祖神の小屋掛け。自治会の同じ組の人たち7、8人で40分くらいかけて作った。出来上がってみるとなかなか立派だ。明日の同じ時刻には解体して片付けてしまう。つまり1日しか見られない。珍しいものなので写真を撮った。



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 天気がいいのですぐ外出。特に行く当てはなかった。たまたま福田のベーカリーカフェ「カンパアニュ」の下を走っていたとき左手下方にため池が見えた。不思議なことに、こんなところに池があるとは今まで気がつかなかった。ぐるりと回りこんで池の下に車を停める。池の横に神社があった。鳥居の字が難しくて読めないのだが、どうやら福田神社というようだ(道路地図には「神田神社」となっているが間違いだろう)。その写真を2、3枚撮ってからため池に上がってみた。



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 地図で調べるとどうやら「宝池」という名前らしい。水面が氷結していた。氷が不思議な紋様を描いている。円形の模様や木の枝のような模様がいくつも描かれている。池そのものよりも氷が描いた絵を撮影した。ため池から降りて付近を散策する。近くをよく車で通るのだが、この一角には初めて足を踏み入れた。福田と吉田の境目辺りだろうが、なんとも不思議で独特の雰囲気がある一帯である。特に車では入れない細い道に入り込むと実にいい雰囲気の路地がたくさんある。ただしほとんど民家ばかりなので、道をたどってゆくと民家の庭に出てしまい、何度も引き返した。不思議空間に迷い込み、方向感覚を何度も失った。周りの道は何度も通っているのに、それらの道に囲まれた一帯には踏み込んだことがなかった。すっぽりと抜け落ちたエアポケットのような空間。いやあ、面白かった。



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 車に戻り福田の信号を突っ切り、 リカーランド「現金屋」の横に道に入る。岩鼻に抜ける道だ。このあたりも一度ゆっくり歩いてみたいが車を停めるスペースがなく、どんどん先に行った。岩鼻の手前あたりで、思い切って左折した。何かの工場の横に出た。車を停めた近くに何と赤い「風林火山」の幟(のぼり)が林立している。その先に赤い鳥居が見える。おや、こんなところに神社があったのか。鳥居のところに「湏ニ貴山神社」と書いてある。(クマイチさんのコメントをいただいて調べてみたら、これは「須々貴山神社」で、神社のある山は一般に天白山と呼ばれていることが判明しました。上田原の合戦の時村上義清が陣を張ったところらしい。)鳥居の先には長い階段が続いている。せっかくだから上まで登ってみよう。そう思ったのが悪夢の始まりだった。最初はそんなに長い階段だとは思わなかった。ところが登り始めて上を見上げたら何と延々続いているではないか。それでもとにかく上り始めたのだから最後まで行こうと思った。



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 その階段がやっかいだった。何しろ踏み段の幅がものすごく狭い。ほとんどが足のかかとがはみ出てしまうくらい狭いのだ。つま先がやっとかかるほど狭い段もある。しかも階段の上に雪が積もっている。その上にあろうことか、踏み段部分が水平ではなく下のほうにやや傾いている。登るときはまだいいが、降りるときは大変だな。半分も行かないうちはそんなのんびりしたことを考えていた。



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 一体この階段は何段あるんだ。上っても上ってもまだ先がある。こりゃ山の天辺まで続いてるのか。ほぼ半分くらいまで登って来た時、振り返って下を見た。まるで断崖を覗いているようだ。不安が頭をかすめる。ここまで来てしまっては簡単に降りられない。登るのも地獄、引き返すのも地獄。とにかく登り続けるしかないと決意する。途中何度も休んだ。足ががくがくだが、腰を下ろすスペースもない。少し大げさに言えば、階段を上っているというよりもロッククライミングをしている感覚だった。半分から上は両手も使って登っていた。足を滑らせたら、一番下まで転げ落ちるしかないだろう。もう心の中では後悔していた。



 もうほとんどやけっぱちだった。登りやすくするためというよりは怪我人を作るために作られたような幅の狭い階段。登っている間は終始足元を見続けるしかない。手すりもないので、体を前に倒して進む。ふらついたら最後だ。時々踊り場のように広くなったところで足を休め、上を見上げる。頂上はまだはるか先だ。周りには誰も人がいない。不安と孤独。ただ階段には先に上った人がいるらしく、一人分の足跡が雪に残っている。ところがどう見ても登った跡はあるが、降りてきた跡がない。これは安心だった。つまり、この階段を下りなくても他に降りてくる坂道があるのではないか、そう思ったからだ。この何百段あるか分からない階段を下りるのは決死の覚悟を要する。坂道を歩いて降りられるのなら楽だ。



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 ようやく天辺に着く。しかし社はさらにそこからまた一段高いところにあった。階段も50段くらいあったがその程度なら何でもない。上り詰めてみると、がっかりした。社の前面にブリキを貼ったような無粋な戸が付けられている。命がけでここまで登ってきたのに、こんなそっけない社に迎えられるとは。ただ裏に回りこんでみると小さな赤い祠があった。これの方がずっと有難味がある。祠の横からの眺めは素晴らしかった。しかし疲れと戻りの不安で眺めを楽しんでいる余裕がなかった。とにかく機械的に写真を撮った。



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 さて、どうやって降りるか。どこにも下に降りる道らしきものはない。上に上る道らしきものはあったが、もうこれ以上上に行く気力はない。あの階段を下りるしかない。そう決意した。階段の上に立って下を見下ろしたとき、これは死ぬなと思った。そう覚悟して降り始めた。体を横向きにして、一歩ずつ慎重に下りる。丁度、スキーの初心者が体を横向きにして斜面を登ったり降りたりしてエッジを使う練習をするような姿勢だ。片足を1段下の段に下ろし、もう片方を同じ段に下ろす。それを延々繰り返す。意外に楽だった。登るより降りるほうが足にかかる負担は少ない。ただし数倍慎重に足を下ろさねばならない。5センチ以下しかない狭い段もあるが、その場合はその下の段に足を下ろす。



 半分以上降りてくると、足が疲れているので足を下ろすときに階段に引っかかるようになって来た。これはいけない。さらに慎重に足を運ぶ。時々向きを変えて、左足を先に下ろしたり右足を先にしたりする。あと残り10段くらいというところまで来た時、一旦足を止めた。やれやれあと少しだと安心した時が一番危ない。気持ちを引き締め直して最下段まで降りる。ここでやっとほっとした。ゴブリン無事生還。途中2、3度足を滑らせ、1度段を踏み外したが、一度も転ばなかった。顔は鼻水がたれるほど寒いが、体はじっとり汗をかいていた。



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 車に戻り家に帰る。家に着いてドアを開けようとした時鍵を落とした。握力がなくなっていた。玄関先に荷物を置いて、デジカメをもってすぐまた外に出る。夕やけがきれいだったので写真を撮っておきたかったのだ。すぐ近くの視界が開けているところに出て夕焼けを撮る。夕焼け空を背景にした美ヶ原がきれいだった。家に戻り熱い珈琲を淹れる。珈琲を飲んでやっと人心地がした。


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