浅間サンライン

 休みになるとふと車で走ってみたくなる道がある。浅間サンライン。国道18号線の北側Photo_19
をほぼ18号と並行して走っている道である。この道がドライブしていて気持ちいいのは一つには眺めがいいからである。上田から佐久方面に行く千曲ビューラインも一部眺めのいいところがあるが、サンラインの方がずっと視界は開けている。走っていると日ごろのストレスが消えて行くようだ。もう一つの魅力は途中でいくつも山側に入る道があり、初めての道にわざと入ってみると意外な風景と出会えることである。前に「川沿いを自転車で」というエッセイを書いたことがある(本館ホームページ「緑の杜のゴブリン」の〔エッセイ〕コーナーに収録)。そこで「とにかく一度も行ったことがないところに行ってみたくて、できるだけ色々なコースを取ってみた。狭い路地などがあると無性に入ってみたくなるのである」と書いたように、自転車が車に変わってもやはり意外な出会いが僕は好きなのである。
 これまで何度も日記に浅間サンライン周辺のドライブのことを書いてきた。今日もまたふらっとドライブに出て、稲倉棚田に行ってきた。いい機会なので浅間サンライン周辺ドライブ日記から3篇を選んで掲載してみます。



<「アトリエ・ド・フロマージュ」に行く> 2006年5月22日

 いい天気だったのでドライブに行くことにした。浅間サンラインに出て、別府の信号を山側に入ったところ(上田から行けば左折)にある「アトリエ・ド・フロマージュ」に行く。チーズPhoto_20
工房があってチーズフォンデュで有名なレストランだ。ここで食事したのは1度だけだが、隣の建物にティールームがあるので、時々ふらっと訪れて珈琲を飲みながら本を読んでゆく。今日もティールームに入りアイスコーヒーを飲んだ。『ダ・ヴィンチ・コード』の続きが読みたかったからだ。ゆったりと時間をすごした後店を出る。まだ明るかったので店の裏のほうを歩いてみた。



 なんとものどかな田園風景。草のにおいが鼻にむっと来る。斜面になっているので眺めがいい。家は点々とあるだけ。のんびり田舎道を歩くのは気持ちがいい。花があちこちに咲いている。庭だけではなく田んぼの隅や道端に何気なく咲いている。街中だとこうはいかない。



 いったん引き返して、最初通過した気になる小道を上がってみた。細い上りの道。左側にきれいな家が建っている。玄関の周りに貼ったレンガが素敵だ。デジカメを持って来ればよかったと思うようないい景色だ。しばらく上ると左手に木立が見えてきた。なぜか見覚えがあるとぼんやり感じた。初めて来るはずなのに変だと思っていたら、なんと見覚えのある「もの」が見えてきた。縄文式住居のように萱のようなものを円錐状に立て掛けて作った小屋。これは以前ある知人に連れてこられたところじゃないか!そうかここだったのか。何という偶然。散歩に来てよかった。誰もいなかったが、なんとなく遠慮して林の中には入らなかった。林の横でタバコをすって引き返した。



 横を水路が流れている。最初の道に戻ったが、そのまま道を横切ってさらに水路に沿って小道を下っていった。どこかで「フロマージュ」の駐車場の下を走っている道に出るはずPhoto_24
だから、そこを右に曲がれば「フロマージュ」に戻れると踏んだからだ。そこから先はビニールハウスの中で仕事をしている人を見かけただけで、車も人も通らない。最初は田んぼの中を進むのだが、そのうち両側が木で覆われ視界がふさがれる。だいぶ下ったがまだ道にぶつからない。ずっと右側の「フロマージュ」のある方角を気にしていたのだが、だんだん離れてゆく気がして心細くなってくる。まあ、最悪の場合道を引き返せばいいのだから迷うことはないと自分を慰める。しかしいくら下っても道はさらに先まで続き、「フロマージュ」は遠ざかってゆく。もう日もだいぶ傾いてきてあたりが黄色がかってきた。左側がちょっと開けたところまできたときに、引き返すことにした。



 今度はずっと上りだ。だいぶ歩いたので足も疲れている。早く車のところに戻りたい。自然足取りも速くなる。やっと車に戻りほっとする。駐車場下の道を確かめてみたら、さっき歩いていた小道に出る手前でカーブして下に降りていた。これでは交差しないはずだ。車の運転は別に疲れないが、塩田までの遠いこと。こんなに遠くまで来ていたのかと改めて驚いた。



<金原ダムに行く> 2006年6月17日
  ドライブに行く。どこに行くと決めてはいなかったが、やはり浅間サンラインへ。野竹トンネルを抜けてすぐ左折。ローマン橋が正面に。橋を超えてすぐ左折。道の横に車を停められる広いスペースがあったのでそこに車を停めてタバコを一服。しげしげと橋を眺める。なかなかきれいな形の橋だ。真下まで行って下から橋を見上げる。道路の真ん中に切れ目が入っている。下から見るとただのコンクリートの塊だが不思議な空間になんとなく圧倒される。



  また車に乗って少し戻り左折。坂をどんどん上がってゆく。どこに出るかと思っていたら以前行った児童書専門店「なるに屋」に行く道に出た。まっすぐ行くと菅平に行く道とぶつPhoto_23
かる。交差点のすぐ横が西友。右折してしばらく菅平方面に向かい、「真田の湯」下の交差点で右折。小諸へ行く山道。何度も通った道だがここは走りやすくて好きだ。金原(かなばら)ダムに行こうかと思いついたのはその道を走っているときだった。あまりに暑いので車のクーラーを入れた。しかし案内板が見つからないので浅間サンラインとの交差点まで行ってしまった。途中「すみれ屋」を見つけた。なくなったのかと思っていたがまだあったんだ!しかしこんな坂を下ったところにあったんだっけ?場所を移転したのかもしれない。気づいたのが遅かったので通り過ぎてしまった。また今度行ってみよう。



 浅間サンラインを上田方面へ向かう。途中で金原ダムの看板を見つける。急遽右折して行ってみることにする。どうも前に通ったことがあるような気がする道だ。人家が途絶えてからすぐダムは目に入ってきた。ダムの下でいったん車を停める。珍しいことにコンクリートの塊ではなく、お城の石垣のように大きな石を組んでできている。下から見上げているとダムの上を歩いている人が見えた。どうやらさらに道を登るとダムの横まで行けるようだ。また車に乗ってさらに坂を上る。意外なほどすぐにダムの横に出た。車を止めてダムを眺める。ダムはさほど大きくはなく、ダム湖というより池に近い。水量もわずかで底のほうに少したまっているだけ。水は緑色ににごっていて汚い。3、4人湖面まで降りて釣りをしていた。



 ダムの周りを歩いてみる。正面の急角度で削った山の斜面に黄色い花が一面に咲いていてきれいだ。どういうわけかその斜面を見ていると目の焦点が合わないような不思議な070226_1
感覚に襲われる。平衡感覚がやや失われてまっすぐ歩けない感じ。ふらつくほどではないが、不思議な感覚だった。しかし素晴らしいところだと思った。天空の桃源郷とでも言うのか、人里はなれた理想郷のような空間だ。「天空の草原のナンサ」という映画のタイトルが頭に浮かんだ。ダムの上から見下ろす景色もきれいだ。カメラを持ってくればよかった。きっとダムの壁がコンクリートの塊でないからそう感じるのだろう。放水路のあたりだけコンクリートでできている。しばらく眺める。かなりの高さだ。落ちたらまず助からないな。ほぼ垂直に屹立するコンクリートの壁。ぞっとする。先ほどの黄色い花が咲いている斜面の下まで行くと、黄色い花がレンギョウだと分かった。とんでもない急斜面に斜めに咲いている。黄色い花は目立つのできれいだ。ダムの周りの道はぐるっと1周するように続いているのだが、放水路の横に柵があって先に行けない。また引き返す。ふと反対側を見ると少しダムから上がったところにあずまやが見えた。あそこまで行ってみよう。車に戻ってさらに道を上がる。道が行き止まりになっているところで車を停めた。左側にあずまやがあった。そこまで下りてまたタバコを吸う。他に誰もいない。悪くない空間だが、ハチや虫がたくさん飛んでいてあまり長居はしたくなかった。タバコをすい終わる頃に軽トラックが1台やってきた。入れ替わるように車に乗って坂を下る。



 途中右側に見覚えのあるワイナリーの看板を見かける。そうかここはやはり以前通った070226_7
道だった。浅間サンラインを上田に向って走っていた時右上の崖の上にまるで空中城郭のように高級そうな住宅が建ち並んでいるのが目に入って、急遽右折してそこまで上がっていったことがある。その住宅街を抜けてさらに坂を上がったとき通ったのがこの道だった。ワイナリーの看板はその時見かけた。後日そのワイナリーに行こうと思ってもう一度探したことがあったが見つからなかった因縁の道である。こんなことでまた通るとは。交差点の名前をよく覚えておこう。浅間サンラインに出るが、どうも上ってきたところと違う交差点に出たようだ。交差点の名前は下大川。おそらく先ほどはひとつ隣の海善寺北から登ったのだろう。(金原ダムの写真は07年2月25日に撮ったもの。)



<稲倉棚田に行く> 2006年12月23日
  気持ちのいい天気だったのでドライブに行く。浅間サンラインに出て、芳田のショッピングモールに入った。レストランで食事をした後、「珈琲哲学」に入る。いつも思うがこの店の2
作りはいい。両側に塔が付いている。右側の塔にはベランダのようなものも見える。この塔にはあこがれる。塔に上がれるのかどうかは分からないが、できれば自分の家にも欲しいと思う。僕は狭い自分だけの空間が好きだ。塔があればそんな空間を作りたい。なんだか幽閉されているようにも思えるが。「珈琲哲学」の内装ももちろんいい。しばらく塔のことを考えた後、珈琲を飲みながら『風の影』(下巻)を読む。今佳境に入っている。



 珈琲哲学を出て、芳田の交差点を右折して山側に入った。浅間サンラインは両側に家が立ち並んでいないので解放感があって好きだ。ドライブとなると、ついここにきてしまう。Photo_22
今走っている道は何度も通ったことのある道で、そのまままっすぐ行けば144号線に出る。その時道の右側にある「稲倉棚田」の看板が眼に入った。迷わず右折する。前から上田に棚田があることは聞いていたが、実際に行ったことはなかった。細い山道をしばらく上がると山の斜面に狭い駐車スペースがあった。すぐ足元が棚田だった。棚田を上から見下ろしている。左側に山があるので右手に向って斜面が下っており、その斜面にそって棚田が作られていた。冬なので茶色かがった風景だが、夏は緑と水が目にまばゆいだろう。周りに家が一軒もなく、人っ子一人いない。シーンと静まり返った不思議な空間。カメラを持ってこなかったことが悔やまれた。明日も天気がよければデジカメを持ってまた来てみよう。



 そこにいたのは5分程度。さらに上にまで道が続いていたのでどうなっているのか見たくなった。車でさらに道を上がる。ぽつんと一軒だけ家があるのは前から見えていたが、何回か道を曲がると家がたくさん見えた。ついさっきまで何もない空間にいたので、こんな山の上にも「集落」があるのかと驚いた。さらに上ってゆくと比較的大きな道に出た。とりあえず左折する。しばらく走ってそれが真田から小諸に行く真田東部線だと気づいた。ここも何度も通った道だ。そのまま行くと真田に出てしまうので引き返そうか迷ったが、踏ん切りがつかないまま菅平に上る144号線に出た。横沢の信号を左折して上田に戻った。144号線も普段は走っていて気持ちがいいのだが、あの棚田の気分が残っているせいか、両側を家に囲まれた道がいとわしかった。

2006年12月23日執筆

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